はじめに
秋月電子で売っているアナログデバイセズ社のADuM3160を使用したUSBデジタルアイソレータを製作しました。
用途としては、USBDACとパソコンの絶縁や、USBオシロスコープとパソコン接続時の絶縁などを考えています。
回路図
今回製作したUSBアイソレータの回路図です。
基本はデータシートの通りの回路です。
SW1の2,3ピンショートで一次側(アップストリーム側)から二次側(ダウンストリーム側)に電源を供給する絶縁型DCDCコンバータU2がONします。
バスパワーで動かす場合などは、U2をOFFか未実装に、またバスパワーの3.3Vで動作させる場合は、JP1をショートして使用する想定です。
今回は U2のDCDCコンバータを使用する条件で制作しています。
部品リスト
品名 | 参照名 | 数量 | 数値・仕様 | 規格・フットプリント | 購入先例 |
抵抗 | R1, R7 | 2 | 220Ω | 1608サイズ | 秋月電子 (R-13833) |
抵抗 | R2 | 1 | 1kΩ | 1608サイズ | 秋月電子 (R-14122) |
抵抗 | R3, R4, R5, R6 | 4 | 24Ω | 1608サイズ | 共立電子 |
コンデンサ | C1, C7 | 2 | 100uF、6.3V以上 | 電解コンデンサ 直径:6.3mm ピッチ2.50mm | 秋月電子 (P-02724) |
コンデンサ | C2, C3, C4, C5, C6, C8 | 6 | 0.1uF、6.3V以上 | 1608サイズ | 秋月電子 (P-13374) |
LED | D1, D2 | 2 | OSHR1608C1A 赤色、OptoSupply | 1608サイズ | 秋月電子 (I-03978) |
フェライト ビーズ | L1, L2 | 2 | BLM18PG600SN1D 60Ω@100MHz,村田 | 1608サイズ | 秋月電子 (P-04442) |
コモンモード フィルタ | FL1 | 1 | DLP11SN670SL2L 67Ω@100MHz,村田 | 1210サイズ | 秋月電子 (P-06985) |
USB コネクタ | J1 | 1 | USB_Bタイプ(メス) | 基板取付用 | 秋月電子 (C-00161) |
USB コネクタ | J2 | 1 | USB_Aタイプ(メス) | 基板取付用 | 秋月電子 (C-11551) |
ジャンパ | JP1 | 1 | 未接続 ※2次側3.3V動作時 にショート | 1608サイズ | 秋月電子 (R-11619) |
リセッタブル ヒューズ | F1 | 1 | MF-R050、Bourns | 0.5A、1Aで遮断 耐圧60V | 秋月電子 (P-12628) |
IC | U1 | 1 | ADUM3160 | 16ピン ワイドSOIC 絶縁電圧2500Vrms | 秋月電子 (I-12767) |
DC/DC コンバータ | U2 | 1 | MCWI03-05S05 絶縁型、入力電圧4.5~9V 出力電流150mA~600mA | SIP-8 | 秋月電子 (M-04261) |
スイッチ | SW1 | 1 | 2-3ピンショートで DC/DCコンバータがON | ピンヘッダ1×03 ピッチ2.54mm | |
テスト パッド | TP1, TP2, TP3, TP4 | 4 | 電源モニタ用 | スルーホール |
部品の値段が結構高い(約1600円)ですが、ほぼほぼ メインのUSBアイソレータIC ADuM3160 と絶縁型DC/DCコンバータのお値段です。基板を除いてコストの約85%です。
ちなみに、ADuM3160の耐圧は2500Vrmsです。
もっと耐圧の高い「ADuM4160」というICもありますが、今回一緒に使ったDC/DCコンバータ MCWI03-05S05の耐圧の方が低くて(DC1600V)ボトルネックになっているので、使う意味は無さそうです。
基板レイアウトと基板完成予想予想3D
基板サイズは秋月電子で売っているタカチのプラスチックケースSW-65Bにぴったり入るサイズを狙って設計してみました。USBのパターンは初めてなんでよく知りませんが、一応等長配線にしようとKiCADの差動ペア機能を使ってみて頑張ってみました。
届いた基板
今回はレジストの色を黄色にしてみました。意外と気に入ったので、以降の基板は黄色を指定して発注してます。
レジストをビアホールに被せる設定で作りましたが、大き目のビアホールだとレジストに穴が空いてしまう時があります。(今回はφ0.6)
もし、中はレジストの保護被膜もはんだレベラーも付いてないような状態となっている場合、酸化とかが不安ですね。次回からはビアのレジストは抜いた設定で作ろうかと思います。
レジストを抜く設定方法を下記の記事にまとめました。
組み立て後の写真
2次側の信号に調子に乗って「コモンモードチョークコイル」を付けたのですが、小さすぎました…。
秋月電子でディスコン(在庫限り)ではない常時在庫の部品ということで選定したのですが、ちょっと小さいけど頑張れば1005の部品もイケるから余裕だろ、と思ってましたがギリギリでした。
側面の電極を剥がしつつも何とか取り付け完了しました。
基板の足は高さ10mmのスペーサーを使うとフタと部品が干渉して閉まらないので、4mmの足を使っています。(秋月電子:ミニカードスペーサー、MPS-04-0、北川工業製)
スナップフィットになってます。
ケースにはホットボンドで固定しようとおもいます。
動作確認
通信速度の確認
とりあえずUSBメモリで正常に動作しているか確認しました。USBメモリを絶縁する意味は特に有りませんが…正常に読み書き出来ています。
電源ONの確認用に付けたLEDが結構眩しいです。
220Ωからもう少し大きい抵抗値に変えた方が良いかもしれません。
どうせ蓋をしたら見えないのでもったいないですしね。
ADuM3160はUSB2.0対応ですが、フルスピード(12Mbps)までの対応のため、書き込み速度は遅いです。
エクスプローラの表示で約0.7MB/sと、規格に対してはまずまずの速度が出ていることを確認しました。
消費電流の確認
USBアイソレータ単体の消費電流と、USBメモリ接続時の消費電流を測ってみました。
USB電圧電流チェッカー(ルートアール製RT-USBVAC6QC)を使用してます。
単体の消費電流が61mA、USBメモリを接続時に150mA-61mAで89mA増加。USBメモリ単体の消費電流は36mAでした。
ちょっと一次側の増加量が多い気がしますが、電流も小さいしDC/DCコンバータの効率を考えるとこの位なんですかね~。
Arduinoマイコンの書き込み・動作確認時のPCとの絶縁
USBアイソレータを挟んだ状態で、Arduino Uno R3に正常に書き込みできることを確認しました。
書き込み・動作確認時にPCと絶縁できるので、少し安心ですね。
アクティブラーニングモジュールADALM2000をつなげてみた
USBオシロスコープやファンクションジェネレータとして使えるADALM2000です。
PCと絶縁できると良いなと思ってつなげてみました。
残念ながらADALM2000は今回のUSBアイソレータを挟むと、使用できませんでした。
ADALM2000を繋ぐとUSBアイソレータの電源LEDがアクセスランプの如く点滅するので、電源供給能力が足りないのかもしれません。(消費電流は約450mA)
⇒ADALM2000に補助電源をつなげると、専用ソフト(Scopy)上で認識しましたが、接続しようとするとScopyが終了します。
残念ながら断念しました。
参考リンク
買ったほうが安いよという方はこちら。