パワエレ(パワーエレクトロニクス)を勉強したくて、絶縁ゲートドライバとして使用できるタイプのフォトカプラTLP250Hを使った基板を作ってみました。
基板設計ソフトはKiCAD、製造は中国の基板メーカーであるElecrowで製造してもらいました。
ゲートドライバとは
ゲートドライバは、大電力用のパワーMOSFETやIGBTなどのゲートを駆動するためのパワーアンプのようなものです。文字どおりゲートを駆動する回路ですね。
小型のMOSFETなどはマイコンの出力でON・OFFできますが、パワーMOSFETでは、必要なゲート電圧が高かったり、ゲート容量(コンデンサのようなもの)が大きいため、素早く充放電するためにゲートドライバが必要です。
また、Hブリッジ回路などで、ハイサイド側のMOSFETをONする場合は、マイコンから絶縁されたゲートドライバが必要です。
東芝:TLP250Hについて
今回使用する東芝製のTLP250Hは、入力回路と絶縁しつつ、MOSFETのゲートドライバとして使用できるバッファロジック出力タイプのフォトカプラです。
TLP250Hの主な仕様
電源電圧:10~30V
出力ピーク電流:±2.5A
伝搬遅延時間:500ns(0.5μs)
立ち上がり、立ち下がり時間:50ns
絶縁耐圧:3750V
TLP250Hは秋月電子で購入することが出来ます。
回路図
今回製作した基板の回路図はこちらになります。
入力信号側(J1)はLEDのようなものなので、電流制限抵抗R1と、ノイズでの誤動作防止用にR2を付けています。
電源はJ2コネクタです。ハイサイド側のMOSFETに繋ぐ場合は、絶縁された電源が必要です。
絶縁タイプのDCDCコンバーターを基板に載せても良かったですね。
出力はJ3コネクタです。ゲート抵抗としてR3(10Ω)を付けています。使用するMOSFETによって調整が必要です。
部品リスト
品名 | 参照名 | 数量 | 数値・仕様 | 規格・フットプリント |
ゲートドライバIC | U1 | 1 | TLP250H 東芝 | ゲートドライバ用フォトカプラ DIP-8_W7.62mm 電源電圧:10V~30V 秋月電子:I-08042 |
抵抗 | R1 | 1 | 220Ω | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R2 | 1 | 1kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R3 | 1 | 10Ω | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R4 | 1 | 10kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
コンデンサ | C1 | 1 | 0.1uF (104) | 1608サイズ 秋月電子:P-13374 |
コンデンサ | C2 | 1 | 1uF (105) | フィルムコンデンサ D9mm_W6.4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-09792 |
コンデンサ | C3 | 1 | 100uF | 電解コンデンサ 直径:6.3mm、ピッチ2~2.5mm 秋月電子:P-10271 |
ターミナルブロック | J1-J3 | 3 | 汎用端子台 | 2pin、5.08mmピッチ 秋月電子:P-01306 |
KiCADで基板設計
今回もKiCADで基板設計をしてみました。
基板サイズは、33mm×50mmです。
部品レイアウト
基板の3D表示
99mm×100mmのサイズに多面取り(パネライズ)した状態で発注します。
届いた基板
中国の基板メーカーであるElecrowに発注して、基板を製造してもらいました。
到着した基板がこちらになります。
この基板は、下記の1ドルキャンペーンの時に作ってもらいました。
(鉛フリー半田レベラーなので実際は3ドル。でも十分安いですよね。)
組み立て
組み立て後の基板の写真です。
部品が少ないので作るのが楽でした。
しかし、MOSFETの数だけ必要なため、フルブリッシ回路を駆動するためには4つ作る必要があります。
動作確認
オシロスコープでパルス電圧を入力した時の出力電圧を確認してみました。
電源電圧は15V
出力側の負荷には、データシートと同様にMOSFETのゲート容量を模擬してコンデンサ0.01μF(10nF)を接続しています。
10kHz、5Vの矩形波を入力してみました。(Ch:1)
出力(Ch:2)に正常に15Vの矩形波が出力されています。
拡大して立ち上がり、立ち下がり時間などを確認してみます。
立ち上がり時間(Tr)は約220nsでした。(10%→90%の変化時間で規定)
データシートだと標準50nsですが、電源電圧やゲート抵抗の条件が違うせいかもしれません。
立ち上がりの伝搬遅延時間(TpLH)は約330nsでした。(50%までの変化時間で規定)
こちらは、データシート記載の(MIN100ns~MAX500ns)平均的な値ですね。
念のため、立ち下がりの方も確認してみました。
立ち下がり時間(Tf)は約230nsでした。(90%→10%の変化時間で規定)
立ち上がりとほぼ同じですね。
立ち下がりの伝搬遅延時間(TpHL)は約330nsでした。
こちらも立ち上がりとほぼ同じです。
まとめ
東芝製のフォトカプラTLP250Hをつかって、絶縁ゲートドライバ基板を作ってみました。
次はこれを利用して、先日作ったMOSFETのハーフブリッジ基板と組み合わせて動かしてみようと思います。