ベースの練習はサボっているというのに、以前作っていたエフェクター、オーバードライブ用の基板を組み立てて動作確認してみました。
オーバードライブとは
オーバードライブは、ディストーション・ファズなどと同じひずみ系のエフェクターです。
ディストーション・ファズなどと比較するとソフトで軽めなひずみのイメージでしょうか。
必ずしも当てはまるわけではないですが、回路動作的には下記の様な違いがあるようです。(トラ技2015-10、p103より)
オーバードライブ:負帰還部分にダイオードを入れてクリップさせる。
ディストーション:ダイオードクリップ回路を使う
ファズ:アンプの動作をクリップさせる
回路図
今回の回路は下記になります。
オーバードライブ回路は、「Rock音!アナログ系ギター・エフェクタ製作集」を参考にしています。
エレキベース用のエフェクターなので、低域は歪ませずにスルーして出力できるように、「ひよこのページ」さんのBASSスルー回路を組み合わせてみました。
【可変抵抗による調整部分】
R6:オーバードライブ回路のゲイン調整
R8:BASSスルー回路のローパスフィルタ周波数調整
RV1:オーバードライブ回路出力調整
RV2:オーバードライブ回路とBASSスルー回路のバランス調整(ミキサー回路)
RV3:出力ボリューム調整
詳細は参考文献の項を確認ください。
部品リスト
使用する部品リストです。
品名 | 参照名 | 数量 | 数値・仕様 | 規格・フットプリント |
オペアンプ | U1-U3 | 3 | NJM4580DD | DIP-8_W7.62mm 秋月電子:I-00069 |
ダイオード (歪み用) | D1-D4 | 4 | 小信号ダイオード 1N4148など、または ゲルマニウムダイオード | アキシャルリード DO-41_SOD81_P12.70mm 秋月電子:I-00941 |
ダイオード | D5 | 1 | 整流ダイオード 例:1N4007G | アキシャルリード DO-41_SOD81_P12.70mm 秋月電子:I-13561 |
LED | D6 | 1 | 赤色LED | LED φ5.0mm 動作確認用、お好みで 秋月電子:I-01318 |
抵抗 | R1, R9, R11 R12, R19 | 5 | 1kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R3, R4 R10, R14 | 4 | 470kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R5 | 1 | 33kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R2, R7 | 2 | 2.2kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R13 | 1 | 4.7kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R15-R18 | 4 | 10kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R20 | 1 | 3.3Ω | アキシャルリード(DIN0207) P10.16mm 1/4Wサイズ |
可変抵抗 | R6 | 1 | 100kΩ Bカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B2B-XH-A 2ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12247 |
可変抵抗 | R8 | 1 | 10kΩ Aカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B2B-XH-A 2ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12247 |
可変抵抗 | RV1 | 1 | 100kΩ Aカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B3B-XH-A 3ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12248 |
可変抵抗 | RV2 | 1 | 100kΩ Bカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B3B-XH-A 3ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12248 |
可変抵抗 | RV3 | 1 | 100kΩ Aカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B3B-XH-A 3ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12248 |
コンデンサ | C4 | 1 | 4.7uF | 電解コンデンサ、または 積層セラミックコンデンサ D9mm_W6.4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-04623、P-08154 |
コンデンサ | C5 | 1 | 0.01uF (103) | フィルムコンデンサ D9.0mm_W4.0mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-05327 |
コンデンサ | C1-C3, C6-C9, C11, C16 | 9 | 0.1uF (104) | フィルムコンデンサ D9mm_W5mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-09790 |
コンデンサ | C10 | 1 | 0.047uF (473) | フィルムコンデンサ D9mm_W4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-05331 |
コンデンサ | C12-C14 C17 | 4 | 1uF (105) | フィルムコンデンサ D9mm_W6.4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-09792 |
コンデンサ | C15 | 1 | 100uF | 電解コンデンサ 直径:6.3mm、ピッチ2~2.5mm 秋月電子:P-10271 |
コンデンサ | C18, C19 | 2 | 47uF | 電解コンデンサ 直径:6.3mm、ピッチ2~2.5mm 秋月電子:P-10270 |
リセッタブル ヒューズ | F1 | 1 | MF-RX030など (Bourns) | 0.3A、0.6Aで遮断、耐圧72V 秋月電子:P-13076 |
コネクタ | J1-J3 | 3 | XHコネクタ | コネクタ:JST_XH_B2B-XH-A 2ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12247 |
ピンヘッダ | JP1-JP3 | 3 | ジャンパピン | 2pin、2.54mmピッチ 秋月電子:C-08593、P-03878 |
DIPスイッチ | SW1 | 1 | DIPスイッチ 2回路 | DIP-4_W7.62mm 秋月電子:P-03141 ※歪み用ダイオードのショート |
KiCADで基板設計
今回もフリーの基板CAD、KiCADでパターンを作成します。
基板サイズは50mm×100mmです。
3Dビュー表示
表側です。
基板裏側です。
裏側は部品は無く、リード部品のはんだのみになります。
部品レイアウト
表側の部品配置図です。
裏側(はんだ面)
Elecrowに発注、製作した基板
多面取り(パネライズ)して発注
今回も中国の基板メーカーである、Elecrowで製作してもらいます。
100mm×100mmまでお値段は変わらないので、2枚面付けして発注します。
裏側
シルクの線の部分でVカットしてもらいます。
到着した基板
到着した基板です。今回もレジストは黄色です。
【仕様】
基板板厚:1.6mm
銅箔厚:35µm(1oz)
レジスト色:黄色
表面処理:鉛フリー半田レベラー
実は、ここまでは下記で作っていました。(寝かせ過ぎ)
組み立てと動作確認
組み立て
部品を実装した状態です。
歪みに非対称性を持たせるため、D4だけゲルマニウムダイオードにしてみました。
反対側からみた写真です。
ボリュームや信号入出力は、XHコネクタを介して接続するようにしてみましたが、頻繁に脱着しないなら直接接続してもよいと思います。(圧着が苦手)
基板裏側
動作確認のため、可変抵抗と入出力のジャックをつなげました。
かなりごちゃごちゃしています。
動作確認
電源電圧:9V
可変抵抗のツマミはセンターあたりにして、動作確認してみます。
今回もアクティブラーニングモジュールADALM2000を使用しています。
周波数1kHzのSin波入力時の波形です。
上側:入力電圧 50mV/div
下側:出力電圧 100mV/div
出力電圧の波形が歪んでいることが確認出来ます。
歪みが非対称なのはD4のみゲルマニウムダイオードにした効果かな?
同様に、周波数10kHzのSin波入力時の波形です。
周波数100HzのSin波入力時の波形です。
BASSスルー回路により、低周波領域は歪んでいないかと思いましたが、少し歪んでいます。
ADALM2000のネットワークアナライザ機能で、周波数特性を確認してみました。
オーバードライブ回路とBASSスルー回路がブレンドされた出力の特性です。
10Hz~100kHzまでスイープさせています。
ブレンドしているので2~3kHz付近に少し谷がありますが、まあまあフラットです。
可聴帯域以上の高周波領域はローパスフィルタでカットしても良かったかも?
RV2:オーバードライブ回路とBASSスルー回路のバランス調整(ミキサー回路)
を、BASSスルー側にめいっぱい回したときの周波数特性を確認してみました。
この状態では、BASSスルー側のみの音が出てくるため、R7(2.2kΩ)+R8(10kΩの可変抵抗)とC10(0.047µF)のローパスフィルタで高域がカットされた特性になるはずです。
結果は、900Hz付近でゲイン-3dBとなっています。
R8の可変抵抗を調整することで、カットオフ周波数を調整できます。
まとめ
ベースの練習は最近していないですが、ベース用のエフェクター、オーバードライブ基板を組み立てて動作確認してみました。
ベース用のエフェクターとして、ひよこのページさんの「BASSスルー」回路を組み合わせてみました。
実際に使って聞いてみても、エフェクターの掛かっていないベースの原音がMIXされて聞こえるため、面白いです。
あとはこれをちゃんと箱に収めて、練習あるのみですね。
参考文献
富澤 瑞夫 (2020):Rock音!アナログ系ギター・エフェクタ製作集 P56:CQ出版社
オーバードライブ回路
ひよこのページさんの「BASSスルー」を参考にさせていただきました。