前回NJW1616を使った降圧DC/DCコンバーターを作りましたが、やっぱり昇圧も作りたいよね!
ということで秋月電子で買えるAnalog Devices社製の昇圧スイッチングレギュレータIC、LT1930を使った昇圧DC/DCコンバータの基板を作ってみました。
基板設計はKiCAD、製造は中国の基板メーカーであるElecrowで製造してもらいました。
昇圧DCDCコンバーターとは
直流(DC)の入力電圧を別の直流電圧に変換する装置をDC/DCコンバーターといいます。
そして、入力電圧より高い電圧に上げて出力するものが、昇圧DC/DCコンバータ-です。
今回は、モバイルバッテリーやUSB給電の5V電源から、昇圧して12~15Vを作ることを想定しています。
逆に入力電圧より低い電圧に下げて出力するものは、降圧DC/DCコンバーターといいます。
NJW1616の降圧DC/DCコンバータについては、下記の記事を参照ください。
LT1930について
LT1930は、Analog Devices(アナログデバイセズ)社製の昇圧スイッチングレギュレータICです。
少し高価ですが、秋月電子で購入できます。
主な仕様は下記になります。
- 形名:LT1930ES5
- 入力電圧:2.6V~16V
- 出力電圧:最大34V
- スイッチング電流:1.2A
- スイッチング周波数:1.2MHz
- パッケージ:SOT-23-5
スイッチング周波数1.2MHzはかなり速いですね。
適当に基板を引くと正常に動作しないかもしれません。
ICのパッケージもかなり小さいです。
回路図
回路図は下記になります。
基本データシートのとおりとしました。
入力電圧5V、出力電圧は12V~15Vを想定しています。
電源入力端子として、MicroUSBのコネクタも設けてみました。
これで入力電源としてモバイルバッテリーなども接続できます。
※だたし、逆流防止のダイオードなどは入れていないので同時接続はダメです。
また、R2(220kΩ)はRV1+R4と並列で接続します。
調整をマイルドにする効果と、最悪RV1がオープンになっても出力電圧が29Vくらいになるのを期待して付けてみました。
そして、スイッチング周波数が1.2MHzと高いので、ムラタのEMIフィルタを付けることでスイッチングノイズを除去出来ないか…と期待して付けてみました。
部品リスト
部品リストは下記になります。
品名 | 参照名 | 数量 | 数値・仕様 | 規格・フットプリント |
昇圧DC/DC コンバーターIC | U1 | 1 | LT1930ES5 | SOT-23-5 秋月電子:I-07292 |
インダクタ | L1 | 1 | 10uH | 例:NR10050T100M 秋月電子:P-08319 |
ダイオード | D1 | 1 | 11EQS04 日本インター 40V、1A | ショットキーバリアダイオード アキシャルリード DO-41_SOD81_P12.70mm 秋月電子:I-08998 |
ダイオード | D2 | 1※ | SS2040FL PANJIT 40V、2A | ショットキーバリアダイオード 面実装:SOD-123F 秋月電子:I-02073 ※D1と排他 |
LED | D3 | 1 | 赤色LED | LED φ5.0mm 動作確認用、お好みで 秋月電子:I-01318 |
抵抗 | R1 | 1 | 100kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P2.54mm ※縦置き 1/4Wサイズ ※データシートではVin10V以上の場合は121kΩが推奨されています。 |
抵抗 | R2 | 1 | 220kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P2.54mm ※縦置き 1/4Wサイズ |
抵抗 | R3 | 1 | 10kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P2.54mm ※縦置き 1/4Wサイズ ※データシートでは13.3kΩが適当とされています。 |
抵抗 | R4 | 1 | 100kΩ | アキシャルリード(DIN0207) P2.54mm ※縦置き 1/4Wサイズ |
抵抗 | R5 | 1 | 4.7kΩ LEDの電流調整用 | アキシャルリード(DIN0207) P2.54mm ※縦置き 1/4Wサイズ |
可変抵抗 | RV1 | 1 | 200kΩ | Bourns_3296W 垂直タイプ 秋月電子:P-00976 |
コンデンサ | C1, C5 | 2 | 例:470uF、35V (耐圧注意) | 電解コンデンサ 直径:~12.5mm、ピッチ3.5-5.0mm 秋月電子:P-02719 |
コンデンサ | C2, C4 | 2 | 4.7uF、50V | 3225サイズ 例:GRM31CR71H475KA12 秋月電子:P-15634 |
コンデンサ | C3 | 1 | 22pF | セラミックコンデンサ D9mm_W4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-08094 |
リセッタブルヒューズ | F1 | 1 | MF-R090など (Bourns) | 0.9A、1.8Aで遮断、耐圧60V 秋月電子:P-13593 |
EMIフィルタ | FL1 | 1 | BNX012-01 | 50VDC、定格電流15A 秋月電子:P-13076 |
ターミナルブロック | J1, J2 | 2 | 2pin 5.08mmピッチ | 汎用端子台 秋月電子:P-01306 |
USBコネクタ | J3 | 1 | マイクロUSBコネクタ (電源専用) | 秋月電子:C-10398 |
ピンヘッダ | SW1 | 1 | 2pin 2.54mmピッチ | 秋月電子:C-08593 |
実際の製作例では、家に余っている別の部品を使っている可能性があります。
今回使用する家にあった10μHインダクタの写真です。
詳細不明ですが、スミダの表面実装用インダクタ、CDRH127/LDNP-100MC(秋月電子:P-13965)に似ていますね。
定数計算について
出力電圧はFBピンの基準電圧1.255Vと抵抗の分圧で決まります。
抵抗の定数、位相補償の周波数Fzを決めるコンデンサの計算について、データシートを参考にして、今回も計算フォームを作ってみました。
製作した基板
完成予想3D図
KiCADで3D表示させたものです。
基板サイズは50mm×50mmです。
部品レイアウト
部品レイアウト図は下記になります。
LT1930は裏面(S面)に配置しています。
面付け(パネライズ)して発注
基板の製造コストを安くするため、100mm×100mmで4個取りでパネライズ(多面取り)してElecrowに発注しました。
届いた基板
到着した基板が下記になります。
本件は、下記の1ドルキャンペーン中に製作してもらいました。(鉛フリー半田レベラーなので3ドル)
まとめ
秋月電子で買った昇圧スイッチングレギュレータIC:LT1930を使った昇圧DC/DCコンバータ基板を作ってみました。
やっぱりDC/DCコンバータと言えば昇圧ですよね。
長くなったので、製作と動作確認は後半の記事でまとめます。