コンパクトで高性能な中華テスター、BSide製 ZT302を購入してみたので紹介します。
PCとの接続機能などの飛び道具的な機能は無いですが、非常に使いやすいテスターです。
似たような機種が他メーカーからもOEMで出ており、おそらくANENG AN8008と同じものだとおもいます。(持ってないので想像ですが)
BSide ZT302の特徴について
・単3電池2本で動作する小型テスター
ニッケル水素充電池が使えるのがうれしいですね。
・小型でも9999カウント表示
4000カウントや6000カウントのものが多い中、この機種は9999カウントです。
・軽快でもっさりしていない動作
更新レートは3回/秒です。
・コンデンサ容量・周波数測定・Duty測定機能あり
最近のテスターには基本的な機能ですが、しっかり搭載されています。
ただし、温度測定機能は無いようです。
・矩形波出力機能搭載
これはテスターには珍しい機能ですね。以前購入したクランプメータ ANENG ST209にも有った機能です。
外観とスペック・機能
開封・外観写真
付属品盛りだくさんな中華テスターが多いですが、この製品はシンプルなセットです。
テストリードと比較的薄い巾着袋のようなポーチが付属しています。
電池フタのネジには、インサートナットがあります。付け外しでネジバカになる心配がなくなるので、安心ですね。
今回はニッケル水素電池を入れて動作させてみました。
スペック・機能
説明書に記載してある精度と、誤差がそれぞれのレンジで具体的にどの位の値になるか計算してみました。
DC電圧
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
9.999mV | 0.001 mV | ±(0.5%+3dig) | 0.05 | 0.003 | 0.053 | mV |
99.99mV | 0.01 mV | ±(0.5%+3dig) | 0.5 | 0.03 | 0.53 | mV |
999.9mV | 0.1 mV | ±(0.5%+3dig) | 5 | 0.3 | 5.3 | mV |
9.999V | 0.001V | ±(0.5%+3dig) | 50 | 3 | 53 | mV |
99.99V | 0.01V | ±(0.5%+3dig) | 0.5 | 0.03 | 0.53 | V |
999.9V | 0.1V | ±(0.5%+3dig) | 5.0 | 0.3 | 5.3 | V |
AN870の時と同じですが、%誤差がフルスケール誤差(%F.S)なのかリーディング誤差(%rdg)なのか、説明書を見てもわからないので、悪いほうにみてフルスケール誤差のレンジMAX値で測定したとして計算してます。
リーディング誤差の場合、%誤差は測定値に比例します。
AC電圧
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
9.999mV | 0.001 mV | ±(1%+3dig) | 0.10 | 0.003 | 0.103 | mV |
99.99mV | 0.01 mV | ±(1%+3dig) | 1.0 | 0.03 | 1.03 | mV |
999.9mV | 0.1 mV | ±(1%+3dig) | 10 | 0.3 | 10.3 | mV |
9.999V | 0.001V | ±(1%+3dig) | 100 | 3 | 103 | mV |
99.99V | 0.01V | ±(1%+3dig) | 1.0 | 0.03 | 1.03 | V |
750.0V | 0.1V | ±(1%+3dig) | 7.5 | 0.3 | 7.8 | V |
周波数範囲:40Hz~1kHz
True RMSと本体に書いてあるので、真の実効値測定に対応しているようです。
DC電流
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
99.99µA | 0.01µA | ±(0.8%+3dig) | 0.8 | 0.03 | 0.83 | µA |
999.9µA | 0.1µA | ±(0.8%+3dig) | 8 | 0.3 | 8.3 | µA |
999.9mA | 0.1mA | ±(1%+3dig) | 10 | 0.3 | 10 | mA |
9.999A | 0.001A | ±(1%+3dig) | 0.1 | 0.003 | 0.103 | A |
µAレンジでかなり小さい電流を測定することが出来ます。
ただし、µAレンジ(MAX≒100μA、1mA)とmAレンジ(MAX≒1A、10A)の差が大きいです。
※10mAと100mAのレンジが無い
AC電流
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
99.99µA | 0.01µA | ±(1%+3dig) | 1 | 0.03 | 1.03 | µA |
999.9µA | 0.1µA | ±(1%+3dig) | 10 | 0.3 | 10.3 | µA |
999.9mA | 0.1mA | ±(1.2%+3dig) | 12 | 0.3 | 12 | mA |
9.999A | 0.001A | ±(1.2%+3dig) | 0.1 | 0.003 | 0.123 | A |
周波数範囲:40Hz~1kHz
抵抗値
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
99.99Ω | 0.01Ω | ±(1%+3dig) | 1.0 | 0.03 | 1.03 | Ω |
999.9Ω | 0.1Ω | ±(0.5%+3dig) | 5 | 0.3 | 5.3 | Ω |
9.999kΩ | 0.001kΩ | ±(0.5%+3dig) | 50 | 3 | 53 | Ω |
99.99kΩ | 0.01kΩ | ±(0.5%+3dig) | 0.5 | 0.03 | 0.53 | kΩ |
999.9kV | 0.1kΩ | ±(0.5%+3dig) | 5.0 | 0.3 | 5.3 | kΩ |
9.999MΩ | 0.001MΩ | ±(1.5%+3dig) | 150 | 3 | 153 | kΩ |
その他機能
・コンデンサ容量
・ダイオードテスト機能
・導通チェック機能(50Ω以下でブザーが鳴るようです)
・周波数、Duty比測定モード
・矩形波出力機能
コンデンサ容量等は取扱説明書にも詳細なスペックは記載されてないので、実際に動かして実力を見てみましょう。
動作確認
今回も、手持ちの測定器と比較してみました。
比較したのは、SANWA製テスター PC7000と、ヒューレットパッカード製のデジタルマルチメーター 3457A(ジャンク品)です。
信号源はアドバンテストのR6144(ジャンク品)を使用しています。
数値はいずれもモニタに表示された値をそのまま記載しています。
DC電圧測定
R6144出力設定値 | ZT302測定値 | PC7000測定値 | 3457A測定値 |
9.900mV | 9.891 | 9.887 | 9.90055 |
-9.900mV | -9.895 | -9.921 | -9.90212 |
99.00mV | 99.06 | 99.073 | 99.0564 |
-99.00mV | -99.05 | -99.104 | -99.0563 |
160.00mV | 160.1 | 160.132 | 160.0951 |
0.9900V | 990.1 | 0.99028 | 0.990129 |
-0.9900V | -989.9 | -0.99058 | -0.990092 |
9.900V | 9.901 | 9.9038 | 9.90094 |
-9.900V | -9.901 | -9.9043 | -9.90086 |
32.000V | 32.00 | 32.0120 | 32.0025 |
-32.000V | -32.01 | -32.0131 | -32.0024 |
オートレンジでの動作は、9999カウント以上で上のレンジに上がり、8500カウント以下で戻ってくる挙動です。
ほぼすべて4桁表示出来るので良い感じですね。9999カウント付近で電圧が少しオーバーシュートして下がってきたような場合は、3桁表示になってしまう時があります。
DC電流測定
R6144出力設定値 | ZT302測定値 | PC7000測定値 | 3457A測定値 |
0.0990mA | 99.01 | 99.11 | 99.1107 |
-0.0990mA | -99.07 | -99.08 | -99.1088 |
0.9900mA | 990.9 | 990.6 | 0.990368 |
-0.9900mA | 990.8 | -990.6 | -0.990346 |
16.000mA | 15.7 | 16.004 | 16.00259 |
160.00mA | 159.9 | 160.04 | 159.9851 |
-160.00mA | -160.3 | -160.04 | -159.9838 |
10mAと100mAのレンジが無いため、16mAなどは3桁表示になってしまいます。
抵抗値測定
抵抗器 | Z302測定値 | PC7000測定値 | 3457A測定値 |
15Ω±5% | 14.97 | 14.99 | 14.90217 |
220Ω±1% | 220.4 | 220.34 | 220.2862 |
1.5kΩ±1% | 1.500 | 1.5016 | 1.501658 |
3.3kΩ±1% | 3.298 | 3.3004 | 3.29993 |
10kΩ±1% | 9.99 | 9.999 | 10.0013 |
191.5kΩ±1% | 191.5 | 191.72 | 191.6905 |
2.2Ω±5% | 2.27 | 2.28 | 2.19336 |
3.9MΩ±5% | 3.973 | 3.9692 | 3.97631 |
いつもの抵抗に加えて、2.2Ω(小さめ)と3.9MΩ(大きめ)も測定してみました。
問題なさそうです。
コンデンサ容量測定
コンデンサ | Z302測定値 | PC7000測定値 | DE-5000測定値 |
150pF±5% | 0.128 | 0.17 | 152.5 |
6.8nF±5% | 6.793 | 6.81 | 6.776 |
68nF±10% | 69.37 | 69.1 | 68.87 |
0.47μF±10% | 477.8 | 477.3 | 474.7 |
6.8μF | 6.731 | 6.79 | 6.696 |
22μF | 21.84 | 21.66 | 20.80 |
2200μF | 2.024 | 2.035 | 1880.2 |
150pFの測定値は少し怪しいですが、PC7000も似たようなものですね。
波形出力機能の確認
出力波形をオシロスコープで測定してみました。
綺麗な矩形波が出力されています。
電圧はおよそ2.6Vppです。電池の電圧でしょうか?
出力できる周波数は、50Hz、100Hz、200Hz、300Hz、400Hz、500Hz、600Hz、700Hz、800Hz、900Hz、1kHz、2kHz、3kHz、4kHz、5kHzです。
SELECTボタンを押す度に周波数が切り替わります。
AC電圧 真の実行値(True RMS)比較
お問い合わせフォームから、本当にTrue RMS測定に対応しているのか?と連絡を頂いたので、確認してみました。
確認方法は、True RMSに非対応のHoldPeak製HP-90EPCで行った方法と同じです。
ファンクションジェネレータ(岩通製 SG-4111 ジャンク品)から、100Hz、約±1.42Vppの正弦波、三角波、矩形波を測定して、どのような値が出るか手持ちのデジタルマルチメーター(ジャンク品)、テスターと比較してみました。
100Hzでの確認結果
測定器 | 正弦波 | 三角波 | 矩形波 |
HP 3478A | 0.9980V | 0.8203V | 1.4025V |
Sanwa PC7000 | 0.9995V | 0.8216V | 1.4056V |
BSide ZT302 | 999.7mV | 822.1mV | 1.393V |
正弦波の実効値は、電圧のピーク値1.42/√2≒1.004V
三角波の実効値は、電圧のピーク値1.42/√3≒0.820V
矩形波の実効値は、電圧のピーク値1.42と同じ
測定結果は、問題なく真の実行値(True RMS)に対応しているようです。
1kHzでの測定結果
測定器 | 正弦波 | 三角波 | 矩形波 |
HP 3478A | 0.9914V | 0.8208V | 1.4045V |
Sanwa PC7000 | 0.9909V | 0.8209V | 1.4065V |
BSide ZT302 | 0.991V | 823.4mV | 1.311V |
スペック上で、周波数範囲:40Hz~1kHzと記載有ったので、上限の1kHzで確認してみました。
矩形波で少し誤差が増えているようです。
まとめ
単3電池2本で動作する9999カウントのコンパクトで高性能な中華テスター、BSide製 ZT302を購入してみたので紹介しました。
良かった点
単3電池2本動作、ニッケル水素充電池でもオッケーです。
コンパクトかつ、軽快な動作。数値は毎秒三回更新です
9999カウント、四桁表示ですが、途中でレンジが上がって事実上三桁になることが少ないため、使っていて気分が良いですね。
珍しい矩形波出力機能あり。なお、活用方法は見いだせていません…
悪い点、イマイチ点
そんなに気になるような点がない優秀な機種ですが、あえて挙げるとすれば、
電流レンジに10mAと100mAのレンジが無い。
PCとの接続機能は無い…これはあるほうが珍しいんですが!
温度測定機能が無い…兄弟機種のZT301には矩形波出力の代わりに温度測定機能があるようです。
また、ANENGのAN8009は代わりにNCV機能があるようです。
さあ貴方はどれを選びますか?(全部載せてくれ)
参考リンク
分解してみたので写真を下記の記事にまとめました。
今回比較したSANWA製テスター PC7000の紹介記事です。
今回のBSIDE ZT302はアリエクスプレスで購入しました。Amazonでも購入出来ますが割高感はありますね。
その他の中華テスターの紹介記事