はじめに
前から欲しかった SANWA(三和電気計器)の PC7000 というテスターを買ってしまいました。
中華テスターやジャンクのデジタルマルチメータをたくさん持っているのに、ちゃんとしたやつを一つも持っていなかったので、基準となる物を一台持っておきたかったためです。
据え置きではないテスターとしては唯一の500000カウントです。
しっかりとしたダンボールのケースに入っています。中は紙のトレーになってます。
ただ、ソフトケースは標準で付属していないので、この箱に毎回しまって保存しておくことにします。(中華テスターに慣れ過ぎてソフトケースが付属しているのが当たり前の感覚になってました…)
DC電圧を中華テスターやジャンクマルチメータと比較してみる
詳しいスペック紹介はメーカーのホームページにマニュアルを公表してくれているので省略しましょう。
DC電圧の測定精度は500mV、5Vレンジの際に最高±0.03%rdg、±2dgtです。
ちなみに500000カウント時の最高精度は、±0.03%rdg、±20dgtです。(同じ?)
DC電圧を中華テスターやジャンクのマルチメータ3478Aと比較してみました。
また、今回は本気を出して、実家からヒューレットパッカードのマルチメータ3457Aを1台引っ張り出してきました。
3457Aはしっかりと暖機したあと、オートキャリブレーション機能を実行して、7桁100PLCで測定しています。大人げないですね。
余談ですが、3457Aを分解すると綺麗な回路基板が拝めます。それだけでも購入しておきたいですね。
比較結果が下記の表になります。(表示された値をそのまま記載しています)
R6144 出力設定値 | PC7000 測定値 | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | 3478A 測定値 | 3457A 測定値 |
16.000mV | 15.989 | 15.982 | 15.990 | 15.9947 | 16.00194 |
40.00mV | 40.015 | 40.01 | 40.020 | 40.011 | 40.0196 |
160.00mV | 160.112 | 160.10 | 160.12 | 160.080 | 160.0852 |
0.4000V | 400.167 | 400.15 | 0.4002 | 0.40008 | 0.400081 |
1.6000V | 1.60047 | 1.5997 | 1.6010 | 1.60017 | 1.600155 |
3.000V | 3.00124 | 3.0002 | 3.002 | 3.00059 | 3.00048 |
4.000V | 4.00121 | 4.0000 | 4.002 | 4.0002 | 4.00016 |
16.000V | 16.0052 | 16.001 | 16.014 | 16.0016 | 16.00152 |
30.000V | 30.0091 | 30.004 | 30.03 | 30.0024 | 30.00219 |
32.000V | 32.0093 | 32.004 | 32.02 | 32.003 | 32.0022 |
PC7000は500000カウントモードで測定しています。
mVレンジは、530mV以上でオーバーレンジ、Vレンジは、5.3V以上で上のレンジに切り替わり、4.6V以下で元のレンジに戻るという挙動です。実質530000カウントなので嬉しいですね。
今まで我が家の基準としていた3478Aと3457Aがほぼ同じ値を示しているのが悩ましいところですが、今後は校正証付きのPC7000を基準としたいと思います。
抵抗値も比較してみる
抵抗測定も比較してみました。
抵抗器 | PC7000 測定値 | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | 3478A 測定値 | 3457A 測定値 |
15Ω±5% | 15.03 | 14.71 | 15.02 | 14.8873 | 14.9021 |
220Ω±1% | 220.38 | 219.52 | 0.2205 | 220.223 | 220.314 |
1.5kΩ±1% | 1.5013 | 1.5012 | 1.5019 | 1.50106 | 1.50164 |
3.3kΩ±1% | 3.2996 | 3.2988 | 3.302 | 3.2989 | 3.3002 |
10kΩ±1% | 9.996 | 9.994 | 10.007 | 9.9981 | 10.0020 |
191.5kΩ±1% | 191.63 | 191.75 | 191.86 | 191.638 | 191.663 |
3478Aと3457Aは4端子法で測定しています。
15Ω時だけHP-770Dが小さいですね。
コンデンサ容量測定
コンデンサの容量測定も比較してみました。
精度の良いコンデンサを持っていないので、毎回同じものを測定して比較しています。
コンデンサ | PC7000 測定値 | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | DE-5000 測定値 |
150pF±5% | 0.17 | 0.08 | 0.142 | 153.1 |
6.8nF±5% | 6.82 | 6.83 | 6.802 | 6.780 |
68nF±10% | 69.2 | 69.3 | 69.34 | 68.88 |
0.47μF±10% | 477.9 | 0.495 | 477.1 | 474.3 |
6.8μF | 6.81 | 6.67 | 6.724 | 6.685 |
22μF(電解) | 21.67 | 20.84 | 21.73 | 20.69 |
2200μF(電解) | 2.022 | 1.866 | 2.008 | 1306.6 |
PC7000の最小レンジは50.00nFなので、150pFの測定は少し厳しいようですね。
バーグラフとデュアル表示機能
バーグラフ表示
60回/秒の高い更新レートのバーグラフ表示機能が有ります。(数値部の更新レートは5回/秒、500000カウント時は1.25回/秒)
これだけ高速だと、アナログテスターのような感覚で確認できますね。
ただし、下記のデュアル表示時はバーグラフは表示できません。(AC電圧/周波数のデュアル表示時は可能)
デュアル表示機能
このテスターで凄いと思ったのが、AC電圧/周波数のデュアル表示だけでなく、DCとACの電圧・電流もデュアル表示できるところですね。
ただ、デュアル表示時はバーグラフ表示が無くなることと、更新頻度が低下するのと、測定精度もシングル時より落ちるというデメリットもあるので、使い分けは必要ですね。
下記の例では、DC2.5Vに1kHzのSin波を重畳させてみた時の測定値とオシロスコープの波形です。
PC7000はメイン:DC、サブ:ACを表示しています。
下記の例は、DC10Vに1kHzの三角波を重畳させてみた時の測定値とオシロスコープの波形です。PC7000はメイン:DC+AC、サブ:ACを表示しています。
電流でも同じことが出来るようなので、DCDCコンバーターのリプル電流の測定が出来るかな?と思いましたが、測定可能周波数レンジは、mAレンジ10Hz~10kHz、Aレンジは10Hz~3kHzのようなので難しそうです。
表示レンジはメイン・サブ何れか大きい方に追従するようです。
下記の例ではACノイズのない電源として、電池(単三電池6本直列)を測定してみました。AC電圧は初めは大きな値が表示されて、徐々に時間をかけて小さくなっていくような挙動です。
PCと接続してデータロガーにする
PC7000はパソコンと接続してデータロガーとして使う機能が有ります。ただし、別売りの光リンク接続ケーブル「KB-USB7」が必要です。そして純正のデータロガーソフト「PC Link 7」も別売りです。
「KB-USB7」だけで中華のUSB接続テスターが買えちゃう値段なので、流石にこの2点セットを買うのはキツイなと思っていましたが、ありがたいことにフリーソフトの「TsDMMViewer」でも使えるということなので、「KB-USB7」だけ購入して試してみました。
Windows10ですが、接続するだけでドライバも自動で入り、簡単に使用することが出来ました。
500000カウント時は6桁目までデータ取れているようです。
この時のログデータを参考までにアップしておきます。(csv形式)
デュアル表示時も両方のデータが記録できるのでうれしいですね。
参考ログデータ(csv形式)はこちら。
まとめ
500000カウントのテスターSANWA PC7000を買ったので紹介してみました。
精度も良いですが、高速なバーグラフや数値更新頻度で、もっさり感が無いのが使っていて気持ちいいです。
このテスターがあれば中華テスターはもう要らない?かと思いきや、残念ながらそうはならずに、最近はUSB接続等の一芸に秀でた物をボチボチ購入しています。追ってそれらも紹介したいと思います。
参考リンク
今回比較した中華テスターの記事は下記になります。
SANWA PC7000と、光リンク接続ケーブル KB-USB7