モノラル出力のオーディオパワーアンプICを使ったレールスプリッタ回路を作ってみたので紹介します。
電子工作マガジン 2018 Autumn号にモノラルオーディオパワーアンプICのLM1875Tを使ったレールスプリッタの記事があり、それを参考にさせてもらいました。
上記の回路で使われているTI製LM1875Tが秋月電子で手に入らないので、別のパワーアンプICでこの回路が動作するのか試してみようと思い、製作してみました。
(共立電子では買えるみたいですが、少し高価なので今回の用途にはちょっともったいない気がしますね)
※2021/1/20に秋月電子でLM1875のセカンドソース品(UTC製)が取り扱い開始したようなので、それも購入して試してみたいと思います。
レールスプリッタ回路とは
レールスプリッタ回路とは、例えば9V電池一つなどの単電源から、両電源(正負電源)の回路を動作させたい場合などに、電源電圧を1/2に分割して仮想GNDを作る回路です。
あくまでも仮想GNDなので、大電流を扱う回路には不向きと思いますが、ちょっとしたオペアンプ回路なんかには便利だと思います。
使用するアンプIC
今回使用するICの候補は下記になります。モノラルタイプのオーディオアンプICで、すべてピンコンパチ(ピンピッチと配列が共通)です。
形名 | メーカー | 出力 | 動作電圧 | 価格(秋月) | 備考 |
TDA2030L | UTC | 14W | ±6V~±18V | 60円 | STMicroのセカンドソース品でしょうか? 予算を抑えて作れそうです。 |
μPC2002 | NEC | 5.4W | 8~18V | 200円 | 少し高いですがNEC製です。 他よりも低電圧で動作します。 リードの曲げ形状が違うので少し修正する必要があります。 |
LM1875 | UTC | 25W | ±8~±30V | 70円 | 最近秋月で取り扱いが始まりました。 セカンドソース品? |
今回は、それぞれのICで作ってみて動作確認をしてみたいと思います。
回路図
回路図は下記になります。
電子工作マガジン2018Autumn号83ページを参考にしました。
【変更した部分】
・コモンモードフィルタ(エミフィル)を入力に入れてみました。スイッチング電源を入力につなぐことを想定して、ノイズ低減が目的です。
・リセッタブルヒューズとダイオードで電源の逆接保護としています。
・可変抵抗による電圧微調整機能を持たせる。分圧抵抗の誤差とアンプICのオフセット誤差をここで調整したいと思います。
・C4は入力部のフィルタです。これは要らないかもしれませんが念のためパターンを設けておきます。
部品リスト
品名 | 参照名 | 数量 | 数値・仕様 | 備考 | 購入先(コード) ※例 |
抵抗 | R1, R4 | 2 | 10kΩ | アキシャルリード(DIN0207) 1/4Wサイズ | |
抵抗 | R2 | 1 | 9.1kΩ ※9.53kΩを使用 | アキシャルリード(DIN0207) 1/4Wサイズ | |
抵抗 | R3 | 1 | 1kΩ | アキシャルリード(DIN0207) 1/4Wサイズ | |
抵抗 | R5, R6 | 2 | 2.2kΩ | アキシャルリード(DIN0207) 1/4Wサイズ LED電流調整用、抵抗値はお好みの明るさで | |
可変抵抗 | RV1 | 1 | 2kΩ ※1kΩを使用 | Bourns_3296Wタイプ 電圧バランス調整用 R2+RV1でR1±数kΩとなるようにする。 | 秋月電子 P-12699 |
コンデンサ | C1, C9, C10 | 3 | 470uF ※耐圧に注意 | 電解コンデンサ 直径:12.5mm ピッチ3.5~5mm | 秋月電子 P-02719 |
コンデンサ | C2, C7, C8 | 3 | 0.1uF | フィルムコンデンサ L9.0mm_W4mm ピッチ5~7.5mm | |
コンデンサ | C3, C5, C6 | 3 | 0.1uF | 3216サイズ C2,C7,C8の代わりの面実装部品として | 秋月電子 P-15180 |
コンデンサ | C4 | 1 | 1000pF | フィルムコンデンサ L9.0mm_W4mm ピッチ5~7.5mm | |
ダイオード | D1 | 1 | 整流ダイオード 例:1N4007G | DO-41(DO-204AL) P12.7mm | 秋月電子 I-13561 |
LED | D2, D3 | 2 | 5mmタイプ | 色はお好みで | |
アンプIC | U1 | 1 | LM1875(同等品) | TO-220-5 | 秋月電子 I-15954 |
リセッタブルヒューズ | F1 | 1 | MF-RX030 | 定格電流0.3A トリップ電流:0.6A 耐圧72V | 秋月電子 P-13076 |
EMIフィルタ | FL1 | 1 | BNX012-01 | 50VDC、定格電流15A | 秋月電子 P-13076 |
ヒートシンク | HS1 | 1 | 20PB020 | サイズW20,D20,H25 | 秋月電子 P-05054 |
ターミナルブロック | J1 | 1 | 2pin_5.08mmピッチ | 汎用端子台 | 秋月電子 P-01306 |
ターミナルブロック | J2 | 1 | 3pin_5.08mmピッチ | 汎用端子台 | 秋月電子 P-01307 |
※上記は例として部品をリスト化しています。実際の製作例では家に転がっていた別の部品を使用している可能性がありますので、ご了承ください。
基板製作
ブレッドボードにICがそのまま刺さりそうにないので、勢いで基板を作ってみました。
使用したソフトはKiCADです。
完成予想3D図
KiCADの3Dビューワーで表示させてみました。
このまま発注もできますが、今回は基板サイズが小さいため、面付けして発注してみることにしました。
部品配置図
面付け(パネライズ)して発注してみる
今回は中国の基板メーカーである、Elecrowに発注して基板を作ってもらいます。
基板サイズが72mm×47mmなので、2個面付けして発注すればお得になります。
※100mm×100mmの基板サイズまでは、お値段は同じです。
Elecrowの仕様より、Vカットする際の基板寸法は80mm×80mm以上にしないといけない、と記載があったので、両脇に捨て基板を付けてみました。(72mmの方向に1枚だと80mm以下でNG、2枚並べると100mmを超えてしまい料金が高くなる。)
捨て基板で繋がるので、左右の基板はスリットで離して並べました。この方がVカットの数が減らせるし、断面もきれいになると思います。スリットは捨て基板に少し食い込ませることで、捨て基板を外した後にルーター加工による角を見えなくすることが出来ます。
Elecrowの仕様より、基板のスリット幅は2mm以上必要と記載ありましたので、今回は2mmに設定してます。
今回の基板の料金と送料は下記にまとめました。
届いた基板
到着した基板がこちらになります。
レジスト色は、また黄色にしてしまいました。
今回は自分で部品を手付けするつもりだったため、捨て基板の部分に特に何も設けていませんでしたが、届いた基板には四隅に穴と認識マークのようなパターンが追加されていました。(Elecrowの製造上の都合もあるのでしょうか?)
引き続き、製作と動作確認を行っていこうと思います。
続きは下記のページにまとめました。