アナログフォトカプラLCR-0203を使用したコンプレッサー(エフェクター)を作ってみました。
以前トラ技の記事で紹介されていた回路で、ずっと作ってみたかったものです。
LCR-0203部品単品の動作確認記事はこちら
コンプレッサーとは
コンプレッサーとは、簡単に言うと大きい音を小さくするエフェクターです。
音の粒をそろえたり、コンプレッサーをかけた後に音量を上げることで小さい音を相対的に大きくし、音の伸び(ロングサスティーン)を得ることが出来ます。
今回は、エレキベースに使用する想定で作っています。
効果がわかりにくく派手なエフェクターではないですが、ベースではスラップなどの音量をそろえたりするのに重要なエフェクターとされています。
回路図
回路図は下記になります。
参考文献に上げているトラ技2017年9月号で特集されていたものを参考に作りました。
書籍化もされおり、そちらも購入しました。(詳細は参考文献へ)
大きな信号が入力されると、アナログフォトカプラLCR-0203(U2)がONして、3-4端子間の抵抗値が小さくなるため、オペアンプU1Aで構成された非反転増幅回路のゲインを下げるように動作します。
可変抵抗(RV1)で増幅率を調整します。
元の回路からの変更箇所:オペアンプを1個追加して、1/2Vccを増幅するレールスプリッタ回路、出力バッファ回路を追加しています。
出力のカップリングコンデンサ(C11)を電解コンデンサの大きめな容量にすれば、ヘッドフォンも直接繋げられるかなと思います。(なのでR13は100Ωと小さめにしています)
またLED(D2)はLCR-0203が動作していることを視覚的に確認したいな~、と思って直列に追加してみました。動作の邪魔になるようならショートします。
部品リスト
使用する部品リストは下記になります。
品名 | 参照名 | 数量 | 数値・仕様 | 規格・フットプリント |
オペアンプ | U1, U3 | 2 | NJM4580DD | DIP-8_W7.62mm 秋月電子:I-00069 |
CdSアナログフォトカプラ | U2 | 1 | LCR-0203 | 秋月電子:P-05864 |
トランジスタ | Q1, Q2 | 2 | 2SC1815 | TO-92 NPNトランジスタ(ECB) 秋月電子:I-06477 |
ダイオード | D1 | 1 | 整流ダイオード 例:1N4007G | アキシャルリード DO-41_SOD81_P12.70mm 秋月電子:I-13561 |
ダイオード | D3, D4 | 2 | 小信号ダイオード 例:1N4148 | アキシャルリード DO-41_SOD81_P12.70mm 秋月電子:I-00941 |
LED | D2, D5 | 2 | 赤色LED | LED φ5.0mm D2:コンプレッサー動作確認用 D5:電源ON確認用 秋月電子:I-01318 |
抵抗 | R3 | 1 | 3.3Ω | アキシャルリード(DIN0309)P12.7mm 1/4W品でも良いです |
抵抗 | R1, R2, R4 | 3 | 10kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R5 | 1 | 1kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R6, R9 | 2 | 470kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R7, R15 | 2 | 1MΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R8, R10 | 2 | 47kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R11, R12 | 2 | 220kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R13 | 1 | 100Ω | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R14 | 1 | 3.6kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
抵抗 | R16 | 1 | 4.7kΩ | アキシャルリード(DIN0207)P10.16mm 1/4Wサイズ |
可変抵抗 | RV1 | 1 | 500k Bカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B2B-XH-A 2ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12247、P-00251 |
可変抵抗 | RV2 | 1 | 100kΩ Aカーブ (XHコネクタ) | コネクタ:JST_XH_B3B-XH-A 3ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12248、P-16477 |
コンデンサ | C1 | 1 | 100μF | 電解コンデンサ 直径:6.3mm、ピッチ2~2.5mm 秋月電子:P-10271 |
コンデンサ | C3, C4 | 2 | 47μF | 電解コンデンサ 直径:6.3mm、ピッチ2~2.5mm 秋月電子:P-10270 |
コンデンサ | C5, C8, C11 | 3 | 1μF (105) | フィルムコンデンサ D9mm_W6.4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-09792 |
コンデンサ | C6, C9, C10 | 3 | 0.047μF (473) | フィルムコンデンサ D9mm_W4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-05331 |
コンデンサ | C7 | 1 | ジャンパ (0Ω) | フィルムコンデンサ D9mm_W4mm_P5.0-7.5mm ※参考文献の回路だとバッファ無しのため、 C7にカップリングコンデンサ、 可変抵抗RV2の後出力でした。 |
コンデンサ | C12 | 1 | 4.7μF | 電解コンデンサ 直径:6.3mm、ピッチ2~2.5mm 秋月電子:P-04623など |
コンデンサ | C2, C13-C15 | 4 | 0.1μF (104) | フィルムコンデンサ D9mm_W4mm_P5.0-7.5mm 秋月電子:P-09790 |
リセッタブルヒューズ | F1 | 1 | MF-RX030など (Bourns) | 0.3A、0.6Aで遮断、耐圧72V 秋月電子:P-13076 |
コネクタ | J1-J3 | 3 | XHコネクタ | コネクタ:JST_XH_B2B-XH-A 2ピン_P2.50mm 秋月電子:C-12247 |
毎度のことながら、実際の製作例では、家に余っている別の部品を使っている可能性があります。
製作した基板
3Dビューア表示
KiCADで3D表示させたものです。
基板サイズは100mm×50mmです。
部品レイアウト
部品配置図は下記になります。
基板裏側(部品無し)
面付け(パネライズ)して発注
下記の様に、100mm×100mmで1シート2個取りの状態にパネライズ(多面取り)して発注しました。
基板裏側
シルクの線の部分でVカットしてもらいます。
発注先は今回もElecrowです。
ちなみに、下記のキャンペーン時に発注しました。
到着した基板
届いた基板が下記になります。
毎度のことながら、レジストは黄色です。
組み立て後の写真
だいぶ間が開いてしまいましたが、ぼちぼち組み立てを行いました。
基板裏側(はんだ面)
接続にXHコネクタを使いましたが、圧着ペンチ(HOZAN P-706)との相性が悪くてかなり作り難いです。
今回使った電線の被膜が太すぎるのかもしれません。(秋月電子で買ったAWG24品)
今回は被膜部の圧着は適当で誤魔化して作りました。
動作確認
ファンクションジェネレータで動作確認
まずは、安定化電源から電源電圧9Vを印加して、過電流・爆発等が無いことを確認しました。
問題なさそうだったので、ファンクションジェネレータから約1VのSin波を入力して、オシロスコープで入出力の波形を確認しました。
上側:入力電圧(1V/div)
下側:出力電圧(1V/div)
出力もほぼ入力と同じ波形が出ていることが確認できますが、これではコンプレッサーが掛かっているかどうかは見てもわかりませんね。
※ちなみにLCR-0203動作確認用に追加したLED(D2)はこの状態で点灯していました。
実際にエレキベースを接続して確認してみる
ファンクションジェネレータの波形ではよくわからなかったので、実際にエレキベースを接続して波形を確認してみました。
上側:入力電圧(200mV/div)
下側:出力電圧(200mV/div)
時間軸:100ms/div
波形を確認すると、入力電圧と比較して、出力電圧は出だしの波形の振幅がそろえられているように見えます。
これはコンプレッサーが効いている、圧縮されていると言って良いのではないでしょうか。
波形の頭の部分を拡大してみました。(20ms/div)
初めの出力波形はゲインが大きくなっていますが、直ぐに振幅が抑えられています。
市販のコンプレッサーはこの出だしの効きはじめの部分を「アタック」と称して調整できるものがあるようです。
もっと時間軸を長くして測定してみた波形です。(1秒/div)
弦が鳴り終わって、入力波形が小さくなってからは、出力電圧の方が大きくなっています。これがいわゆるロングサスティーンという物でしょうか。(ただのノイズかも)
市販のエフェクターでは、この部分を「リリース」として調整できるものもあるようです。なかなか奥が深いですね。
最後にプツッと切れているのは、ベースの弦を指で触ってミュートしたタイミングです。
まとめ
秋月電子で購入したアナログフォトカプラ「LCR-0203」を使用して、トラ技の回路を参考にしてコンプレッサー基板を作ってみました。
とりあえず動作は確認出来ましたが、次はこれを百均のブリキ缶などにちゃんと組み付けて、エフェクターとして常用できるようにしたいですね。
出力に追加したオペアンプは、ボルテージフォロワのバッファ回路でなく、数倍の増幅回路に出来るようにしておけばよかったかも…と後になって思いました。
そんなことよりベース練習しろ…
参考文献
トランジスタ技術 2017年9月号 P184:CQ出版社
富澤 瑞夫 (2020):Rock音!アナログ系ギター・エフェクタ製作集 P209:CQ出版社