はじめに
安価な中華テスターで40000カウントの物があったので購入してしまいました。HoldPeak製のHP-770Dです。
40000カウント、電流・電圧誤挿入防止のシャッター、バーグラフ、オートバックライトと、高級なテスターに載ってそうな機能が沢山あったのでつい飛びついてしまいました。
前回買ったANENG AN870が意外と高精度だったので、中華テスターにハマってしまい、何種類か購入しております。ボチボチ使ってみて紹介していきたいと考えております。
機能・スペックなど
機能について
HP-770Dの機能は、AC,DC電圧、AC,DC電流、抵抗値測定、コンデンサ容量、周波数カウント、Duty測定、温度、トランジスタhFE、NCV機能(非接触電界検出)、ダイオード測定機能と一通りの測定機能があります。
電流レンジと電圧レンジの測定時のプローブの接続する場所を間違わない様に、物理的に動くシャッターがついています。まるでHIOKIの高級テスターのようですね。
ですがこの構造の場合、プローブ接続しっぱなしで電源OFFに出来なくなる場合(シャッターがあたってスイッチが回せない)もあるんじゃね?と思いましたが、HP-770Dはロータリースイッチの左右両側に電源OFFがあります。賢いですね。
※µA・mAレンジに刺している時はやっぱり抜かないとスイッチが回せずに電源が切れませんでした。
測定を止めて同じ数値を表示させ続けるHOLDキー、MAX/MIN値を表示するキー、押したところをゼロ点とするREL⊿キーが付いています。
電池は9Vの角型バッテリーです。単3・単4のニッケル水素の充電池が使えないのが残念ですが、100均でアルカリ電池を購入して使うことにします。
電池は付属してないので、取り付けるには裏蓋のネジ上下2か所を外すとカバーが取れて取り付け部が出てきます。
下の写真では全部外してますが、真ん中の左右2つはスタンドのネジだったので外さなくて良いです。しかもネジの種類(タッピングとミリネジ)が違うので外してしまった場合は混ざらないように気を付けましょう。
スタンドの根元に磁石があるので、くっつけておくとネジが無くなりません。この磁石の本来の用途は何なんでしょうか?テスター本体をメタルラックにくっつけておくには弱すぎるようです。
オートバックライトは上部の明るさセンサであるCdSを手で覆うと瞬時に点灯します。暗さに応じて微妙に明るさを調整してくれているようです。おまけにロータリースイッチの先端も光ります。OFFに出来ないみたいなので消費電流が気になりますが、便利ですね。
電源を切り忘れてソフトケースにしまうと、電池が終了するかもしれません。一応15分無操作でオートオフしてくれるみたいです。
スペックについて
今回はAliExpressで購入しましたが、商品詳細ページに精度等の情報があまりなかったので、届いた製品に付いていた説明書を元に記載しておきます。また、毎度ですが到着時箱が潰れてます。心配な人は国内発送の通販で買ったほうが良いですね…
初めに書いておきますが、私は桁数マニアなので40000カウントのこのモデルに飛びついてしまいましたが、下記の通り精度を計算してみると、ホントに5桁の意味があるのか?と正直疑問になる感じはあります。
一番下の桁がピロピロ動いているかどうかで、何となく測定値の安定度がわかるだろ、という謎理論で自分を納得させることにします。
もっと大きな変動はバーグラフをアナログテスターの針的な感覚で見ることで判断することが出来ます。ですがアナログ感覚で見るためにはバーグラフの更新頻度が大事だと思います。HIKOKIの高級なテスターなどは、更新頻度40回/秒です。このHP-770Dは、、、そんなに速くないような感じがします。数値の更新頻度と同じような感じです。それだとバーグラフのありがた味が減ってしまいますね。
DC電圧
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
40mV | 0.001 mV | ±(0.5%rdg+5dig) | 0.2 | 0.005 | 0.205 | mV |
400mV | 0.01 mV | ±(0.1%rdg+2dig) | 0.4 | 0.02 | 0.42 | mV |
4V | 0.1 mV | ±(0.1%rdg+2dig) | 4.0 | 0.2 | 4.2 | mV |
40V | 1mV | ±(0.1%rdg+2dig) | 40.0 | 2 | 42 | mV |
400V | 0.01V | ±(0.1%rdg+2dig) | 0.4 | 0.02 | 0.42 | V |
1000V | 0.1 V | ±(0.1%rdg+5dig) | 1.0 | 0.5 | 1.5 | V |
入力インピーダンス:10MΩ、40mV/400mVレンジで100MΩ以上
AC電圧
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
40mV | 0.001 mV | ±(1%rdg+10dig) | 0.4 | 0.01 | 0.41 | mV |
400mV | 0.01 mV | ±(0.8%rdg+10dig) | 3.2 | 0.1 | 3.3 | mV |
4V | 0.1 mV | ±(0.8%rdg+10dig) | 32.0 | 1 | 33 | mV |
40V | 1mV | ±(0.8%rdg+10dig) | 320.0 | 10 | 330 | mV |
400V | 0.01V | ±(0.8%rdg+10dig) | 3.2 | 0.1 | 3.3 | V |
750V | 0.1 V | ±(1.2%rdg+10dig) | 12.0 | 1 | 13 | V |
周波数レンジ:40Hz~1kHz
DC電流
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
400μA | 0.01 μA | ±(1%rdg+10dig) | 4.0 | 0.1 | 4.1 | μA |
4000μA | 0.1 μA | ±(1%rdg+10dig) | 40.0 | 1 | 41 | μA |
40mA | 1 μA | ±(1%rdg+10dig) | 400.0 | 10 | 410 | μA |
400mA | 0.01 mA | ±(1%rdg+10dig) | 4.0 | 0.1 | 4.1 | mA |
4A | 0.1 mA | ±(1.2%rdg+10dig) | 48.0 | 1 | 49 | mA |
20A | 1 mA | ±(1.2%rdg+10dig) | 240.0 | 10 | 250 | mA |
AC電流
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
400μA | 0.01 μA | ±(1.2%rdg+10dig) | 4.8 | 0.1 | 4.9 | μA |
4000μA | 0.1 μA | ±(1.2%rdg+10dig) | 48.0 | 1 | 49 | μA |
40mA | 1 μA | ±(1.2%rdg+10dig) | 480.0 | 10 | 490 | μA |
400mA | 0.01 mA | ±(1.2%rdg+10dig) | 4.8 | 0.1 | 4.9 | mA |
4A | 0.1 mA | ±(1.5%rdg+10dig) | 60.0 | 1 | 61 | mA |
20A | 1 mA | ±(1.5%rdg+10dig) | 300.0 | 10 | 310 | mA |
抵抗値
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
400Ω | 0.01 Ω | ±(1%rdg+10dig) | 4.0 | 0.1 | 4.1 | Ω |
4kΩ | 0.1 Ω | ±(0.5%rdg+10dig) | 20.0 | 1 | 21 | Ω |
40kΩ | 1 Ω | ±(0.5%rdg+10dig) | 200.0 | 10 | 210 | Ω |
400kΩ | 10 Ω | ±(0.5%rdg+10dig) | 2.0 | 0.1 | 2.1 | kΩ |
4MΩ | 0.1 kΩ | ±(0.5%rdg+10dig) | 20.0 | 1 | 21 | kΩ |
40MΩ | 1 kΩ | ±(1%rdg+10dig) | 400.0 | 10 | 410 | kΩ |
コンデンサ静電容量
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
99.99nF | 10pF | ±(3%rdg+10dig) | 3.0 | 0.1 | 3.1 | nF |
999.9nF | 100pF | ±(2.5%rdg+5dig) | 25.0 | 0.5 | 25.5 | nF |
9.999µF | 1nF | ±(2.5%rdg+5dig) | 250.0 | 5 | 255 | nF |
99.99µF | 10nF | ±(5%rdg+10dig) | 5.0 | 0.1 | 5.1 | μF |
999.9μF | 100nF | ±(10%rdg+20dig) | 100.0 | 2 | 102 | μF |
9999μF | 1 μF | ±(10%rdg+20dig) | 999.9 | 20 | 1020 | μF |
99.99mF | 10 μF | ±(10%rdg+20dig) | 10.0 | 0.2 | 10.2 | mF |
残念ながらコンデンサ容量測定時は4桁の表示になります。ただ精度的に5桁は不要なことは明らかなので、気にしないことにしましょう。
周波数測定
測定レンジ | 分解能 | 精度 | %誤差 | dig誤差 | 合計誤差 | 誤差単位 |
9.999Hz | 0.001Hz | ±(0.1%rdg+5dig) | 0.01 | 0.005 | 0.015 | Hz |
99.99Hz | 0.01Hz | ±(0.1%rdg+5dig) | 0.10 | 0.05 | 0.15 | Hz |
999.9Hz | 0.1Hz | ±(0.1%rdg+5dig) | 1.00 | 0.5 | 1.5 | Hz |
9.999kHz | 1Hz | ±(0.1%rdg+5dig) | 10.00 | 5 | 15 | Hz |
99.99kHz | 10Hz | ±(0.1%rdg+5dig) | 0.10 | 0.05 | 0.15 | kHz |
999.9kHz | 100Hz | ±(0.1%rdg+5dig) | 1.00 | 0.5 | 1.5 | kHz |
9.999MHz | 1kHz | ±(0.1%rdg+5dig) | 10.00 | 5 | 15 | kHz |
周波数も同じく4桁です。精度のスペックが良いだけに、桁数マニアとしては少し残念です。
その他の測定機能
【Dutyサイクル測定】
測定レンジ | 精度 |
0.1%~99.9% | ±(2%rdg+2dig) |
周波数は10kHz以下
【温度測定】
測定レンジ | 分解能 | 精度 |
-20~150℃ | 0.1℃ | ±(3%+3dig) |
150~1000℃ | 0.1℃ | ±(3%rdg+3dig) |
【ダイオードテスト】
順方向電圧:約1.5mA
逆方向電圧:約2.7V
LEDの極性に自信がないときに確認できます。
【導通チェックモード】
50Ω以下でブザーが鳴ります。
開放時電圧:約1V
【トランジスタhFEテスト】
測定レンジ:0-1000
ベース電流Ib:約10µA
コレクタエミッタ間電圧Vce:約1.8V
トランジスタの直流増幅率(hFE)を測ることが出来ます。
この機能は秋月の安いテスターに付いていましたが、ほかに付いている機種を持ってなかったので地味に嬉しいですね。
動作確認
動作確認といっても、精度を確認するような基準電圧源や測定器を持ってないので、ジャンクで購入したアドバンテストのR6144で電圧・電流を出力して、ヒューレットパッカード(hp)製マルチメータ3478A(現:キーサイト)と、前回購入したANENG AN870との測定値と比較しました。
※もちろんどれも校正などしてませんので、何が正なのかは判りませんが、ここでは雰囲気だけでもお楽しみください。
DC電圧測定
R6144のそれぞれの出力レンジのMAXが1.6000なので、そのポイントと、一応今回HP-770Dがメインなので、HP-770DのレンジMAX狙いのポイントで測っております。測定値は単位を揃えず、実際にモニタに表示された値を記入しております。
R6144 出力設定値 | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | 3478A 測定値 | AN870 との差 | 3478A との差 | 差の単位 |
16.000mV | 15.982 | 15.998 | 16.0019 | -0.016 | -0.0199 | mV |
40.00mV | 39.978 | 40.03 | 40.021 | -0.052 | -0.043 | mV |
160.00mV | 160.06 | 160.12 | 160.084 | -0.06 | -0.024 | mV |
0.4000V | 400.10 | 0.4002 | 0.40013 | -0.10 | -0.03 | mV |
1.6000V | 1.5996 | 1.6008 | 1.60017 | -1.2 | -0.57 | mV |
4.000V | 3.9998 | 4.002 | 4.0004 | -2.2 | -0.6 | mV |
16.000V | 15.997 | 16.012 | 16.0016 | -15 | -4.6 | mV |
32.000V | 31.996 | 32.02 | 32.002 | -24 | -6 | mV |
もはやどの値が正なのか自分でもわかりませんが、3478Aが最も正しいとすると、mVレンジではHP-770Dだけ少しズレている感じです。余裕で誤差規格の範囲内ですが。
逆に1.6V以上はAN870よりズレが少ない感じです。また、AN870は20000カウントなので、そこはアドバンテージがありますね。
また、測っていて気が付きましたが、AN870は2Vを少しでも超えると上のレンジに切り替わりますが、このHP-770Dは4Vを超えても4.2V辺りまではレンジが上がらない仕様のようです。つまり実質42000カウントであり、これは少し得した気分?です。
レンジが上がった後は、3.8V以下になれば下のレンジに切り替わりました。(オートレンジ時の動作)
DC電流測定
すべてのテスターを直列に繋いでDC電流を流しました。
R6144の出力の都合で、160mAまでの確認になります。
R6144 出力設定値 | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | 3478A 測定値 | AN870 との差 | 3478A との差 | 差の単位 |
0.1995mA | 199.39 | 199.66 | 0.211 | -0.27 | -11.61 | μA |
0.4mA | 399.76 | 400.4 | 0.411 | -0.64 | -11.24 | μA |
1.6000mA | 1600.1 | 1601.7 | 1.611 | -1.6 | -10.90 | μA |
4.000mA | 4001.3 | 3.997 | 4.012 | 4.3 | -10.7 | μA |
16.000mA | 15.943 | 16.006 | 16.012 | -63 | -69 | μA |
40.00mA | 39.873 | 40.05 | 40.024 | -177 | -151 | μA |
160.00mA | 159.63 | 160.17 | 160.023 | -0.54 | -0.393 | mA |
40mAレンジが仕様値の範囲内ですが結構ズレています。どちらが本当の値かは定かではありませんが、、、HP-770Dだけズレているのであやしいですね。
抵抗測定
抵抗器 | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | 3478A 測定値 | AN870 との差 | 3478A との差 | 差の単位 |
15Ω±5% | 14.69 | 15.01 | 14.8973 | -0.320 | -0.207 | Ω |
220Ω±1% | 219.51 | 0.2205 | 220.192 | -0.990 | -0.682 | Ω |
1.5kΩ±1% | 1.5002 | 1.5022 | 1.50106 | -2.00 | -0.86 | Ω |
3.3kΩ±1% | 3.2966 | 3.301 | 3.2986 | -4.4 | -2.00 | Ω |
10kΩ±1% | 9.993 | 10.004 | 9.9972 | -11.0 | -4.2 | Ω |
191.5kΩ±1% | 191.66 | 191.85 | 191.656 | -0.2 | 0.004 | kΩ |
hpの3478Aは配線抵抗をキャンセルできる4端子法で測定しております。HP-770Dは4端子法の測定は出来ませんが、プローブショート時0Ωと表示されました。
コンデンサ静電容量測定
コンデンサ測定はAN870と、秋月で購入したLCRメーターDE-5000と比較しております。
6.8µF以下はフィルムコンデンサです。
DE-5000の測定周波数はフィルムコンデンサ測定時は1kHz、電解コンデンサ測定時は120Hzに設定しました。
コンデンサ | HP-770D 測定値 | AN870 測定値 | DE-5000 測定値 | AN870 との差 | DE-5000 との差 | 差の単位 |
150pF±5% | 0.15 | 0.144 | 154.2 | 6 | -4.2 | pF |
6.8nF±5% | 6.90 | 6.808 | 6.788 | 0.092 | 0.112 | nF |
68nF±10% | 69.4 | 69.41 | 69.03 | -0.01 | 0.37 | nF |
0.47μF±10% | 0.492 | 477.0 | 474.8 | 15 | 17.2 | nF |
6.8μF | 6.62 | 6.727 | 6.700 | -0.107 | -0.08 | μF |
電解コンデンサ 22μF | 20.77 | 21.79 | 20.81 | -1.02 | -0.04 | μF |
電解コンデンサ 2200μF | 1.876 | 2.018 | 1878.1 | -142 | -2.1 | μF |
HP-770Dは「68nF品は99.99nFレンジ」、「6.8µF品は9.999µFレンジ」で測れるかと思ったら、レンジが上がってしまっているのが解せぬところです。
電解コンデンサの測定結果はDE-5000と近いです。150pFと小さいコンデンサも一応測れているので、実用的には十分ではないでしょうか。
まとめ
40000カウントの中華テスター、HoldPeak製のHP-770Dを購入したのでまとめてみました。
40000カウントに加えて基本的な測定機能と、電流・電圧誤挿入防止のシャッター、バーグラフ、オートバックライトと機能盛りだくさんです。(バーグラフの更新頻度は正直残念でした…)
精度的にはまあまあっぽいですが、これから使用して何かあれば記事を追記していきたいと思います。
ジャンク測定器の次は中華テスターにハマりつつあります。トータル金額で日置や三和の良いやつを一台買えたんじゃないかという疑惑はあります。まずいですね~
参考リンク
分解してみました。
今回のHP-770Dと比較した中華テスターANENG AN870の紹介記事です。
同じHoldPeak製で6000カウントのUSB接続可能なテスターです。
同じく、USBでPCに接続可能な4000カウントのテスターです。
単三電池2本で動作する9999カウントのテスターです。
DC電流も測定可能なクランプメータです。
ちゃんとした国内メーカーのテスターも購入したので、比較してみました。