以前製作したTI製デジタルアンプIC、TPA3118D2を使ったパワーアンプ基板の動作確認を行ったので、結果をまとめておきます。
Mono Mode(PBTL)で使用する基板になります。
回路図と部品表などは、下記ページを見てください。
製作した基板の写真
部品実装後の基板の写真です。
今見てみると、電源のパスコンの部分などに高価なチップタイプのフィルムコンデンサを使っていますね。(C5,C17,C18)
もったいないので、ここは普通のセラミックコンデンサで良かったと思います。
ICの放熱パッドに半田がのるように、基板裏面の穴から半田を流し込んでいます。
TPA3118D2のはんだ付けは、思ったよりも小さくて難しかったので、下記の顕微鏡を使って作業しました。
ジャンパ設定と動作説明
スイッチング周波数の設定
TPA3118D2はスイッチング周波数をAM0、AM1、AM2のピン設定で変更することができます。
下記データシートより
今回の基板では、ジャンパでスイッチング周波数を変更できるようにしています。
スイッチング周波数は高ければ良いという訳ではなく、ノイズがラジオなどに干渉するのを避けるなどの目的があるようです。今回は600kHzに設定しました。
動作モードについて
TPA3118D2は、下記の2つの変調モードで動作させることが出来ます。
こちらも、ジャンパで切り替えられるようにしています。
シルクで表示していましたが、完全に逆に表示してしまいました。
・BD変調モード(ジャンパ:Lo)
・1SPW変調モード(ジャンパ:High)
BD変調モードでは、短いスピーカーケーブルで使用時にLCフィルタレスで動作させることが出来るようです。
1SPW変調モードは、若干のTHDの低下とLCフィルタが必要になりますが、高効率で動作できるモードのようです。
今回はヒートシンクレスの状態なので高効率な1SPWモードで動かしてみます。
ゲイン設定
TPA3118D2のゲイン設定は下記の表のようになっています。(データシートより)
マスターモードとスレーブモードがあります。
スレーブモードは、2個以上でクロック同期させて使うときに使用するモードです。
マスターモードとは付ける抵抗値が変わってしまうため注意
今回は基板一個だけの動作確認なのでマスターモードで動かします。
【注意】ゲイン設定で入力インピーダンスが変わる(データシートより)
TPA3118D2はゲイン設定で入力インピーダンスが変わるため、カップリングコンデンサの容量との組み合わせでカットオフ周波数が変わります。
今回は、カップリングコンデンサに1µFを接続しているので、
f=1/2πRCより、約2.65Hzになります。
データシートでは、2Hz以下にすることが推奨されているので、もう少し大きくした方がよいかも。
動作確認
動作条件と接続
下記の条件で動作確認してみました。
電源電圧:DC12V
スイッチング周波数:600kHz
動作モード:1SPW
ゲイン設定:20dB
ダミー負荷:100Ω
TPA3118D2の信号入力は差動入力になっています。今回はテストのためシングルエンド入力で動作させています。
最終的には、下記の記事の様な、シングルエンド-差動変換回路を繋げたいと考えています。
ヒートシンクについて(今回は無し)
マルツ(デジキー)で購入したヒートシンクです。
形名:ATS-TI10P-521-C1-R1
TPA3118D2のデータシートで使用されていたもので、ちょうどよい高さになっています。
しかし取り付け用のネジサイズがインチネジの#4-40(太さ約2.8mm)と特殊で買えていないため、今回は無しで動作確認します。
たぶん下記のネジが使えるはず…
入出力波形確認
入力電圧:約200mVp-p時の出力電圧を確認してみました。
BTL出力のため出力波形は差動でみる必要があります。(今回はADALM2000を使っています)
100Hzでの動作波形
入力電圧:195.2mVp-p
出力電圧:1.954Vp-p
ゲインはほぼ10倍(20dB)で、設定どおりですね。
1kHzでの動作波形
10kHzでの動作波形
少しゲインが増えています。
20kHzでの動作波形
少し出力波形が歪んでいます。
周波数特性の確認
ADALM2000のネットワークアナライザ機能で、周波数特性を確認してみました。
入力電圧100mVで、10Hz~100kHzまでスイープさせたときの周波数特性です。
可聴帯域は20dBでほぼ一定ですが、63kHz付近にピークがあります。
前回のTDA7492MVデジタルアンプ基板と似ていますね。
負荷抵抗100Ωでやっていることが原因の可能性もあるので、小さくしてみます。
負荷抵抗を100Ω→24Ωに小さくして再測定してみました。
結果、63kHz付近のピークが小さくなりました。
4Ω~8Ω付近でテストできる負荷抵抗(ダミーロード)を準備したほうが良さそうですね。
【注意】
BTL出力の波形をオシロスコープで見る場合、差動プローブやGND基準で2本使って測定する必要があります。
今回は、入力が差動になっているADALM2000を使用しました。
まとめ
TI製デジタルアンプIC、TPA3118D2を使ったパワーアンプ基板の動作確認を行いました。
正常に動作していることを確認出来ました。
比較用に中華TPA3118デジタルアンプ基板を買ってみたのですが、ピン数の異なる酷い偽物だったのでやる気が無くなりました…
今回製作した基板との比較写真です。
記事を書くのが遅くなって、TPA3118D2が秋月電子でほぼ売り切れ状態になってしまいましたが、マルツ(デジキー)ではまだ手に入るようです。
後継のIC(TPA3156D2)も試してみたいですね。
参考リンク
買ったほうが安いし速いよ、という方用のリンクです。
私はアリエクスプレスで購入しましたが、Amazonからなら本物か?保証はできません。